――その言葉を聞いたとき、この先ずっと、彼となら一緒にやっていけると確信したんです。彼なら幸せにしてくれるに違いないって。

 ブラウン管の向こうでやけに赤い唇をした、人気の若手女優がそう言った。幸せそうに笑いながら、突然の結婚会見で堂々と。今彼女は自分が世界で一番幸せだと思い、その姿を、その幸福を世界中に示したいのだろう。
 私はといえば、それまで彼女のことは結構好きだったのだが、一気に冷めた。我ながら酷く勝手な感情だ。ただ、彼女が結婚したからそう思ったのではないことを明言しておく。
 ――この先ずっと、あなたとならやっていけると思うの。
 なんて自分勝手な言葉だろう。相手のことを考えないで、押し付けてばかりいる。幸せを相手に求める。この手の言葉を言われるたびに私はげんなりしていた。敏感になることではないと解っているのだが、幼いころから求められ続けていたからだろうか。
 違う。幸せはしてもらうのではなくて、するものなのだ。自分の力で幸せになって、最愛の人が出来たらお互い幸せになろう、幸せにしようとするのが大事なのではないか。
 
 私はそんな風に思っていた。